平成29年3月に発表された,福岡県立築城特別支援学校の待木教諭による実践研究報告書です。
ローコスト視線入力装置を活用した実践としては,比較的早期から取り組まれたものです。相当に具体的な内容ですので,支援学校等で視線入力を活用する方には必読でしょう。
そして,もっとも大きな特徴としては,「知的障害」を持つ児童への取り組みという点です。知的障害のない児童への適用が多いので,画期的な報告書と言えるでしょう。
要旨
本研究は、知的障害を併せ有する肢体不自由児2名に対して、視線入力装置を用いたコミュニ ケーション指導を行い、児童が視線で要求を教師に伝える力を高めることを目的として行ったも のである。 本研究では、スライドコンテンツを使って、画面に表示される画像をじっと見ることで教師に 自分のしたい遊びを伝えることを繰り返し行った。その際フィッティングや教室環境の整備、ス ライドコンテンツの工夫など視線入力装置の活用と遊びの選定や言葉掛けなど教師の働き掛けに 配慮した。 知的障害を併せ有する肢体不自由児 2 名(A 児、及び B 児)を対象とした実証授業を通じ、A 児 は、文字カードをじっと見るとその遊びが行われることが分かり、2枚提示された文字カードを 見比べた後にどちらかをじっと見て選択することができるようになった。また、B 児は画像をじ っと見るとその遊びが行われることが分かり、画像をじっと見ることができるようになった。 本研究により、コミュニケーションが困難だと思われる児童の指導における、視線入力装置を 活用することの効果について検証することができた。
キーワード:知的障害を併せ有する 肢体不自由 コミュニケーション 視線入力