【iPhone&視線】キャッチーな動画をみたときに気をつけること。
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これをみて,既存の視線入力装置のかわりになる!とか iPhone や iPad で視線入力が楽に使えるようになる!などと思った人はICTのリテラシーがやばいです。ICT活用のセンスが崩壊してますね。目利きスキルゼロ。
このAppleの技術はすばらしいものですし,今後の発展が期待されるものであることは確かです。
その上で,この動画でしっかり理解しておくべき点をまとめてみます。あくまでも,「視線入力」という切り口ですから,どうしてもネガティブな項目が多いのはお許しください。
ですから,以下の内容は,けっしてディスっているわけないということをご理解ください。
- 健常者が上半身に動揺がない状態で入力している
- かなり理想的な状態(当事者はどう?)
- 少し条件が変わった時に精度がどうなるか要確認!
- iPhoneをしっかり固定している
- 既存の視線入力装置と同様に固定が重要(毎回同じ位置にiPhoneが置けるかが重要)
- 精度の再現性によっては気軽に使えるものではない
- ローコスト視線入力装置+PC より高額
- 現役のiPhone/iPad を視線入力装置として使うにはもったいない
- ディスプレイは24か27インチのiMacを使っている
- iPhoneのディスプレイではパネルを選択するような動作は困難
- 別途大きめのディスプレイを用意する必要がある(それができる人はどれほどいる?)
- 眼球の動きだけでは追従しきれずに顔を動かしている
- 眼球運動だけでは,トラッキングするのに精度が十分ではないと推測
- 視線入力で iPhone自体の操作は困難かも
- 実用を考えれば,システム側の操作(アプリ変更・音量変更・電源断)が視線で行える必要がある
- スイッチ入力が使いにくいかも
- Bluetoothのスイッチではペアリングや電源に難あり(アダプターで解決できるかも)
福祉教育分野,特にコミュニケーション支援の現場で,iPhoneの精度の悪い視線入力を使わなくてはならない状況があるのでしょうか。せいぜいガンバって二択ができるかどうかで,既存のものと比べて何がメリットなのでしょうか。
可視光カメラを使っている以上はTrueDepthカメラを使っているとはいえ,どうしても赤外線式の視線入力装置ほどには精度でません。当然ながら,頭の動揺に対するロバスト性も低いものにならざるを得ません。iPad Pro のような大きいディスプレイなら視線入力のみで使える可能性はあります。ただ,対応アプリは当面は少ないものとなるでしょう。
実際の利用方法としては,健常者がゲームアプリの一部操作やブラウザ画面をスクロールするのに使ったり,支援学校等で短時間でのみ教材として利用するのが現実的でしょう。間違っても,ALS患者さんが日々のコミュニケーション支援として常用できるものではありません。おそらくは,Apple もそのような利用形態は想定していないはずです。
なぜあえてこのような不愉快な記事を書いたかといえば,SNSを通じてリテラシーが低い方がよくわからずシェアして期待し,結果的にたくさんの人が落胆するケースがあとを絶たないからです。OAKのエアスイッチ機能やアレなんかも。。。先日取り上げたこのカメラもその可能性が極めて高いです。
私としては,iOS用 ARKit 2 の視線入力機能を,福祉・教育分野で積極的に使うメリットはないと断言できます。
期待することはとてもいいことだとは思いますが,技術的な限界を理解しておかないと,ぬか喜びばかりすることになります。そして,いつまでたっても新しい技術に踊らされて地に足がつかないことになり,結果的に何も使いこなせなせません。受験で言えば,いつまでも新しい参考書に浮気して,結局一冊もやりきれないのと同じです。
テクノロジーは根本的には人を幸せにしますが,使い手のリテラシーが低いとうまく活用するところまでたどり着けません。
お読みいただきありがとうございます。