技術の狭間に生きる人々
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CPUはここ40年間ほどムーアの法則に従って性能向上を果たしている。
我々がポケットに入れているスマートフォンの性能は,30年前のコンピュータ(パソコン)の実に100万倍の性能を持つ。
ただし,これはあくまでもハードウェアの話である。
では,ソフトウェアはこの30年で100万倍も便利に使いやすくなったか。
おそらく,これらを定量評価できるようになったとしても100万倍の数値とはならないだろうが,ソフトウェアによって我々の生活にもたらした影響は極めて大きい。
これまで,ハードウェアとソフトウェアは進化は正のスパイラルを成してきたと言ってよい。
ところで,人間の体はあくまでもフィジカルなものであり,故障もすれば劣化もする。
生まれながらにしてこの社会で生きるには不都合な条件を抱えてきた場合もあるかも知れない。
一方,最近30年で,コンピュータを利用することで,いわゆるこれらの身体障害者を支援する装置が開発されてきた。
特にこの15年は,パソコンの高性能・高機能化を利用して,身体障害者のQOLを向上させる試みが盛んになってきた。
かつては,専用の高価な装置を使う以外になかったものが,安価なPCで代替できるようになったのである。
当然ながら,コンピュータを使うには何らかの入力装置が必要である。
もっとも単純な入力装置としては押しボタンがある。
現在ではソフトウェアの力によって,この押しボタンひとつでコンピュータが自由に使えるようになっている。
しかし,この押しボタンさえ打てない人々も存在している。
押しボタンひとつ押すことができれば,外界とあらゆるコミュニケーションが可能となるはずなのに,この小さいなボタンが押せない。
パラダイスへの扉を開く鍵となる小さな押しボタン。
ボタンを押せさえすれば,この30年で驚異的な進化を遂げたコンピュータを縦横無尽に駆使できるはずなのである。
実に単純なボタンを目の前に,押すことができずに佇む人々が存在する事実。
人工呼吸器の騒音のみが虚しく響く部屋の中で,決して可視化されない熱い想いを押し殺す日々。
そして,とうとう絶望する人々。
高度なコンピュータと単純なボタンひとつ。
技術の狭間に苦悩する人々が今日も生き,さらに生まれ続ける。
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(ICT救助隊所有)
*ATAC2011は,12月17・18日に京都国際会館で開催される,障害者支援に関するカンファレンスです