重度障害者のリアル情報を講演会場にお届けする『from BED!』プロジェクト
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ここ数年,私が担当するICTを活用した重度障害者支援に関する講演等では,障害当事者とその家族をインターネットのビデオ通話サービスでつないで,聴講者にリアルな情報をお伝えするスタイルを定番にしてきました。当事者に実際に機器を操作してもらったり,ご家族からもお話を伺うのです。参加者の反応はたいへんよく,講演での内容を補完するものとしてもうまく機能していました。
当初は,障害当事者や家族も戸惑いながらの実施でしたが,今ではすっかり慣れてしまいました。主に使うアプリはスカイプ・LINE・Facebookビデオ通話です。当事者のネット登壇は,ネット回線さえ整っていれば,十分にコンテンツとして成立するものと確信しています。
当事者家族が当たり前に思っていることは,多くの部分で他人にとっては意外とそうではありません。つまり,ありのままの状況を伝えてくれるだけでも高い情報の価値があるのです。現状では,重度障害者のコミュニケーション方法や外出ノウハウは活字にされにくいからです。その他,ヘルパーとの関係,胃ろう食やお風呂のノウハウなど,話題にできることがらは多岐にわたるでしょう。
ところで,講演というのは,一般に閉じた空間で行うものですから,とかく講師の独りよがりになりやすいものです。そこで,会場の外とつなぐことで客観性が持ち込まれ,結果として講演の信頼性や品質が向上すると考えました。ニュース番組で言えば,現場からの生レポートがあるのと同じようなものでしょうか。
最近は,これまでのネット登壇を活用した講演経験を,他の講師や組織が実施する講演・研修等の場にも提供したいと考えはじめました。ついには障害当事者のネット登壇を実現するサービスを対外的に展開していきたいと考えるにいたりました。理解ある障害当事者とその家族の協力が得られる見込みが立ったこともあります。
プロジェクト名は『from BED!』。ベッドの上からでも社会に参加できるという意味を込めています。
たとえば,学校や病院で行われるような「医療的ケアの必要な子どもについての勉強会」に,ビデオ通話で当事者&ご家族を登場させるのです。この場合,主催者と当事者とのマッチングをするのが『from BED!』です。いわば,ネット出演専用の障害者タレント事務所です。もちろん対価はいただきますので,管理費を除いた分は当事者に支払われます。寝たきりの重度障害者もお金を稼ぐことができるのです。
さらには,日常的な事務業務も重度障害者に担ってもらいたいと考えています。今やクラウドによって情報共有が簡単になっていますから,パソコン操作ができる当事者であれば仕事として取り組むことも可能でしょう。
まだまだ一般向けにサービスを展開するには課題がありますので,最初はミニマムに始めます。当事者の方でネット登壇してみたい!自分の講演や研修でネット登壇をしてもらいたい!という方はご一報ください。また,日常的な事務処理をお手伝いできる方も募集しております。