盛岡バスセンター
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盛岡市民、いや、岩手県民なら誰でも「盛岡バスセンター」を知っているだろう。
盛岡を中心に沿岸・県北・県南を結ぶターミナルだからだ。
同時に近郊路線バスの終着でもある。
盛岡駅よりも馴染みのあるという人も少なくない。
開業は1960年。世界は冷戦真っ只中であり、戦後15年目の年。
今や日本各地に「昭和」をテーマにした建物やお店が多い中、ここはそのままポンと昭和が残されている。
よくも平成24年までこのクオリティーを保ったものだと関心せざるを得ない。
もしかしたら、あえて現代化しなかったのだろうか、とさえ思ってしまう。
バスセンター内に入ると、ラーメンやらおでんやらの匂いが漂う。
冬はそこに石油ストーブの臭いも加わる。
下を見れば、薄汚れた黒いコンクリートが時代の流れを感じさせる。
一部の柱からは鉄筋も見えているというのに、去年の大地震を耐えぬいたのは驚きだ。
(ガラスが割れたままの箇所はあるが)
さらに店内に入れば、売り上げが心配になってしまうほどの時計屋さんが確認できる。
店主も売る気がなさそうだ。天井近くに置いてあるアナログテレビをずっと観ている。
(岩手など被災県のデジタル移行は延長中である)
周りを見渡すと、びっしりお店が詰まってはいるものの、買う人はそう多くはない。
珍味やらの乾物が多すぎるのである。
ところで、この盛岡バスセンター、いよいよ老朽化で激しいということで向こう数年で建て替えとの噂。
そんな噂は数年前から聞いているので、「石油が採掘できるのはあと40年」のような感じも受けないわけではないが、ここに入れば建て替えが必要なことはわかる。
何しろ、肝心のバスがもう入りきらないのである。
時刻表にではなく物理的にである。
50年前のバスの仕様で作られたバスレーンはいかにも狭い。
もはや敷地内で転回はできないようだ。
よく接触事故が起きないものだと感心するくらいのバスの密度。
あと、このバスセンターに何度お世話になるかわからないが、もし取り壊すと決まれば、有給を取ってでも必ず最後の雄姿を感じに行くと思う。
あの、ナチュラルな昭和感を感じる場所はもう少ないはずだし、何よりも感謝の気持ちを込めて最期を見届けたい。