【独り言】「視線入力」の単語はひとつですが。。。
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重度障害時に関わる福祉教育分野の一部の人々は、Tobii社製の視線入力装置の超絶性能を当たり前に思いすぎ、その恩恵に鈍感になってしまっているように思えてなりません。それは、まるでプロのシェフが作った絶品のスパイスカレーとレトルトカレーを、「だいたい同じ」と考えているのに等しいもの。これを、「視線入力のカレー問題」と名付けましょう。
Tobii社製装置が圧倒的に優れているのは、目の検出処理と頭部動揺の補正処理能力です。日本国内のどの企業の製品も足元に及ばず、海外製品もトータルの性能では凌駕する製品はありません。
視線入力を実現するための目の検出処理は、本来たいへんむずかしい技術です。眼球の動きは、せいぜいミリ単位であるにもかかわらず、頭部はその数十倍以上の数センチで動きます。それでも、数ミリの動きを正確に検出しているわけです。砂糖水だけなら甘いですが、そこにたくさんのお酢を入れたら甘さはわからなくなります。それと同じようなもので、本来検出したいものを大きく超えるノイズの中から、正確に情報を拾うのは極めて難しいのです。
20年近く前から、情報工学系の学会では「Webカメラで動く視線入力ができた!」「安く視線入力が実現できた!」が頻繁に登場していましたが、どれも実用できるものではありませんでした。頭が少しでも動けばカーソルがとんでもなく動くので、顎を乗せる器具が必要な感じです。
立ちながらでも座りながらでも、なんとなく使っても安定して視線入力ができるのは、高度な技術があるからこそ。すごい技術ほど、その存在に気づかないものです。他社製品が出てきてもすぐに自滅してしまうことからも、その実力がわかるかもしれません。
AndroidやiOS端末のセンサーでは、目の動きを専用装置よりも精度良く取得するのは現状ではできておらず、これからも難しいでしょう。やはり、専用装置に軍配があがるのです。ここ1-2年で登場している、AndroidやiOS端末による「視線入力」は、可視光カメラやデプスカメラを使った簡易的なものといっていいでしょう。
携帯端末の「視線入力」と専用装置のそれとは、ジムとユニコーンガンダムくらいには性能差がありそうです。ただ、使い方によってはジムも有用です。
間違ってはいけないのは、専用装置と同じものだと思ってしまうこと。大きなパネルを選択するくらいなら携帯端末の視線入力機能でも実用できるはずですが、実務的に文字入力したい場合や、重度障害児がセンサリー的に利用するのは相当に困難と言わざるを得ません。
今後、携帯端末だけで動く「視線入力」がいくつか登場するかと思いますが、Tobii社製の専用装置の代替になるかもと期待してはいけません。専用装置の機能とは別物であって、まったく用途が違うのです。鳴り物入りで登場したAmazon Fireタブレットの視線入力機能を思い出してみればわかるでしょうか。あれは、どうなってしまったのでしょう。
「視線入力」の単語はひとつですが、それを実現する方法は多様であり、性能も千差万別であることは意識しておいた方がいいですね。
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