【後編】とある支援学校による上肢不自由生徒への「神宿題」、これでいいの?

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ミサヲさん

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ミサヲさんの教科書が普通の紙のものだったのは大変ガッカリしましたが,支援学校の言い分もわからないでもありません。

これまで,全国各地の支援学校・養護学校の方とお話しした中では「できない理由」はこんな内容に大別されます。

ミサヲさんの例に当てはめるとこんな感じ。

  • 「予算がない!」問題
    • 教科書のデジタル版は高額なので用意できない
    • iPadを提供したいが高額なので用意できない
  • 「時間がない!」問題
    • 教員が忙しくて教科書をデジタル化する余裕がない
  • 「特別扱いできない!」問題
    • ミサヲさんにデジタル化すると全員にするハメになる
    • とくにかくミサヲさんにだけ特別な配慮はできない
    • 「やる平等」より「やらない平等」
  • 「ICTがよくわからない!」問題
    • iPadの使い方がよくわからない
    • デジタル化する方法がよくわからない
    • デジタル化?何それ?
  • その他
    • 教科書は教員が持てばいい
    • 教科書は教員が読んであげる
    • ミサヲさんはiPad使えるの??

たいていの理由は,言い訳にもならない問題。

だって,支援学校は普通学校に比べて大変な予算を使っているのです。ほとんどは人件費でしょう。

やはり,看過できないのは「教員が忙しい」という理由。

ミサヲさんも,教員からは「忙しい」が理由でデジタル化がなされなかったといいます。

同じ出展から,生徒数と特別支援教育を本務とする教員数を見てみると,ざっくり,支援学校全体で教員一人あたり1.7人の生徒。肢体不自由に限ってみれば,1.1人。

生徒の教育が第一かつ受け持ちの生徒の数は少ないはずなのに,その準備に時間が取れないというのは,教育者としてまったくもって本末転倒。

上記の学校教育費をみても,「時間がない」は,何か無駄なことか,本来重要ではないことに時間が取られての発言としか考えられません。

「学校」において,生徒の授業以上に優先順位が高いものなどあるのでしょうか。

もしあるとしたら,支援学校は「学校」ではないのです。「子ども一時預かり所」の域を出ないということになります。普通校とは比較にならないくらいに,生徒当たりの教員数が多いというのに。

ミサヲさんの教科書のデジタル化では,中等部1年生の教科書については,学校がまったく対応する気配がないので,私がすべてデジタル化(自炊)しました。

2年生はのときは,ごく一部の教科書のみ,しかも数ヶ月も遅れてデジタル化されました。。。。

ミサヲさんは,全部の教科書を読みたかったのに(もちろん,本人談)。

もはやこんな状態(T_T)

数時間でできることをやらないというのは,もはや理由がわかりません。

60数年越しの学校を楽しみにしている生徒に対して,これでいいのでしょうか。

教科書を裁断してスキャン
裁断機が一番かさばりますね

教科書のデジタル化は,裁断機とスキャナがあれば,そう難しい作業ではありません。

スキャンしたデータをPDFにして,iPadにコピーしてあげれば自作のデジタル教科書のできあがり!

さて,記事タイトルの「神宿題」とは?

そう,「紙の宿題」のことです。

昨今「神エクセル」は,お役所などで見かけるエクセルファイルに批判が集まっています。私も大学の神エクセルに参っているひとり。

本来エクセルはデータ管理を目的としたアプリケーション。でも,見た目上の「様式」を作るために,セルを無駄に結合したり罫線を引いたりして,データの再利用を不可能にするのは愚の骨頂。

役所などでは「パソコンに強い」という人が,平気で「神エクセル」に手を染めている例があると思われます。

授業中にちょっと訪問

余談はさておき,「神宿題」。

なぜ紙で?ミサヲさんも困った表情

私はまたまた驚いたのです。

夏の日差しの強いある日,ふとミサヲさんを訪ねたら,ずっしりとした紙の宿題を渡されていたからです。

『夏休みの宿題 国語』はけっこうな分量で,すべて手書きが前提のようでした。名前の欄は大きいものの,明らかに手書きすることが求められています。

代理で記入することを前提にして宿題を出したのでしょうか。

宿題というのは,自力でやることに意味があると思うのですが,障害者の場合は手伝ってもらうのが当たり前なのでしょうか。

もっと言えば,ミサヲさんは自力でできる環境を持っているのに,なぜそれを活用するという,どう考えても真っ当なことに気付かなかったのでしょうか。

障害児教育のプロであるはずの支援学校教員なのに!

ミサヲさんは何とか鉛筆を加えて書いていましたが,これでは問題を解答する前に疲れてしまいます。そもそも,ページもめくれませんが。

こんなのを自力でどうしろと。困ったミサヲさん。

たかが夏休みの宿題ではありますが,ICTの知識&活用の無さ以前に,この思いやりのないスタンスに腹立たしささえ覚えます。

おそらくは,この教諭の教育活動は,全般に渡ってこのような「教員中心」の視点で展開しているのでしょう。

つまり, 障害のある生徒の個別性を十分に考慮せずに, 教員にとってやりやすい授業を漫然と行っていると想像できるのです。

この教諭だけだと思いたいところですが,当該校では同様のケースが散見されます。

少なくともこの学校では,障害のある生徒に対して,仮に対応策のある事例であっても,踏み込んだ支援などは十分に行われていない可能性が極めて高いです。

ちなみに,私から当該教諭に「この紙の宿題ではミサヲさんは自力でできません」と伝えると「そう言えばそうでしたね~。冬までに勉強しておきます。」とのことでした。

はい,すぐに辞職しなさい。給料(税金)もらう価値なし!ボーナスなんてもってのほか!

GoogleドキュメントやWordを使えば,きっと次の日には用意できて,かつ訪問せずともミサヲさんに提供でたはずなのです。

うーん,支援学校というのは不思議なものです。

教育サービス組織として,これはぜったいにおかしい。もし民間組織ならとっくに廃業を迫られれるケースです。

解答は誰かに手伝ってもらう以外ありません

とはいえ,この支援学校に行ってよかったこともあったようです。

ミサヲさんの入所施設の壁新聞

修学旅行などはそのいい例です。60歳も年下の同級生とのディズニーランド。楽しそうです(^^)

頻繁に更新される壁新聞はいかにも「学校」らしてくて楽しいです

今年(2019年),ミサヲさんは無事に高等部を卒業\(^o^)/

しかし,卒業式後にまたビックリが。。。

2年近く前に就学奨励費で購入したiPad Air が「返却」されたのです。

ミサヲさんは訪問教育の生徒。

就学奨励費は,学校が関わるものの個人に支給されるものですから,所有権は個人にあると考えられます。

通学している生徒であれば,学校に保管されていてもいいのかもしれません。しかし,ミサヲさんは訪問教育の生徒。担当教員が毎回持参していたわけでもありません。

結局,当時最新のiPadでしたが,2年間でほんの数回しか使わなかったそうです。「返却」時には型落ちに。。。

生活に生かしてこそのICT支援機器。

使ってなんぼのiPadを大事に大事に学校に保管してどんな意味があるのでしょうか。

生徒が壊さないようにとの配慮だとしても,使えなかったら意味がまったく意味がありません。だったら,使い倒して壊したほうが100倍マシな訳です。

人生でかけがえのない経験が得られた6年間の学校体験でしたが,「就学」においては,ミサヲさんには不満がたくさんあるのも事実。

ミサヲさんによると「あんまり勉強させてもらえなかったな」とのこと。

これからミサヲさんと一緒に問題点を整理して,解決方法なども探っていきたいと考えています。

これから,少しでも被害者を出さないために。

「神宿題」の出ない学校になってもらうために。

入所施設内のミサヲさんコーナー

《自然の囁き】
そよ風 ソヨソヨ ささやいた。
みんな芽を覚まし
あっちの木 こっちの花が
色とりどりの 着物着て
花見をしながら大喜び。

太陽 ギラギラ 光ってる
広い海めがけ
青い空 白い波と
色とりどりの 珊瑚礁
魚が飛びつき大喜び

北風ピューピュー吹いてきた
山がささやいた
かえでの葉 もみじの葉が
色とりどりの 化粧して
太鼓に合わせて大喜び

雪が ドンドン 降ってきた
森がつぶやいた
あっちの木 こっちの山が
白いパジャマに 着替えして
素敵な夢見て春を待つ

板倉ミサヲ
出会いはいろいろありました
女子高生としての3年間(^^)
番田くん(ストレッチャー)も支援学校にはキレていたひとり

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